システム開発会社に外注して基幹システムなどの導入を成功させるためには、開発会社の選び方が最も重要です。あなたがプロジェクトの舵取りを担っているプロジェクトマネージャーなら、自社にあった開発会社をどのように選ぶか悩むことでしょう。
今回は、プロジェクトマネージャーが意識したい開発会社の選び方を4つ解説します。さらに、開発会社の選定に役立つRFIとRFPの意味や実施方法についても言及しました。プロジェクトを成功に導くためにも、ぜひ本記事をご活用ください。
システム開発会社に外注する目的と効果
システム開発会社に外注する目的とは、システム開発で発生するコストを可能な限り抑えて、必要なシステムを開発・導入することです。外注によって、開発に携わるシステムエンジニアやITエンジニアを自社で準備する必要がなくなります。
また、パソコン用意したりサーバーなどの設備を新たに準備したりする必要もありません。なぜなら、外注先の開発会社が開発に必要な準備を自社の代わりに行ってくれるからです。
<システム開発会社に委託できる主な業務>
- 開発に必要な人材や設備の準備
- システム責任者の選別
- 開発スケジュールの立案
- スケジュール管理
外注によって、人的コストや設備投資のコストを抑えながら、必要な機能や品質が備わったシステム開発 を進められることが外注に期待される主な効果となります。
一方で、外注には注意点も存在します。システム開発を委託するため「システム開発のノウハウを自社に蓄積させる」「開発に必要な情報伝達を自社だけで完結させる」といった目的達成は困難です。このような目的がある場合は、システム開発の内製化を検討する余地があるでしょう。
開発スキルや開発スタッフが自社にいる場合、システム開発を内製化するか外注するかの選択を迫られるかもしれません。まずは外注する目的と効果が自社の方針にあっているかを確認しましょう。
オフショア開発とは
オフショア開発とは、海外の開発企業や子会社に業務を委託する開発手法のこと。ITニーズの増加などによってIT人材が不足している現在の日本で、注目されている開発手法の1つです。2019年、経済産業省がみずほ情報総研株式会社に委託して作成した資料では、2030年にIT人材が約79万人不足する可能性が指摘されています。
参考:経済産業省委託 みずほ情報総研株式会社実施『平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(IT人材等育成支援のための調査分析事業)』
オフショア開発を導入すると、ベトナム、台湾、フィリピンといったアジア諸国の企業やエンジニアとの連携が可能となります。アジア諸国の企業とシステム開発に取り組むことで、開発コストの削減、リソースの確保などにつなげられるのです。こうした開発事情も今後プロジェクトマネージャーが意識したい情報といえるでしょう。
プロジェクトマネージャーが確認したいRFIとRFPの意味
自社にあった開発会社を絞り込む際は、RFIとRFPが有効なツールとなります。両者の意味を確認しておきましょう。
RFIの意味と目的
RFIとは、Request For Informationの頭文字をとった略称で「情報提供を依頼すること」または「情報提供依頼書」を意味します。ここでいう情報とは、企業情報や技術情報などの情報です。候補先の開発会社にRFIを実施することで、ホームページや会社パンフレットなどに公表されていない情報の獲得が可能になります。候補先の選定に役立つ情報を幅広く収集できるのです。
RFPの意味と目的
RFPとは、Request For Proposalの頭文字をとった略称で「提案依頼書」を意味します。両者の違いは、先ほどのRFIが情報提供を依頼するのに対して、RFPでは具体的な提案を依頼する点です。具体的な提案を依頼することで、候補先の絞り込みが容易になるでしょう。
RFPでは、候補先の開発会社に対して、以下の項目に返答するよう依頼できます。
- 外注する業務の内容
- 予算
- 締切
- スケジュール感など
これらの希望をRFPに明記することで「弊社は、このようなシステムを希望します。いくらで取りかかってもらえますか?「どのようなスケジュールを組んでもらえますか?」といった質問を投げかけられるわけです。各社から具体的な回答を得ることで、候補先の選定がスムーズに進むでしょう。
また、RFPを通じて自社が求める完成イメージを各社に伝えることで、期待通りのシステム発注を期待できる可能性も高まります。
プロジェクトマネージャーが意識したい開発会社の選び方
それではプロジェクトマネージャーはどのような点を意識して開発会社を選ぶのがよいのでしょうか。自社にあった開発会社の選び方を5つ解説します。
開発実績や業績を参考にする
開発実績を参考にすることで、開発会社の過去の成果を確認したり得意分野を読み取ったりできるようになります。自社が希望する分野の開発実績があれば安心して依頼できるでしょう。公式のWebサイトを参考にしたり非公開の開発実績がないか確認したりしてリサーチを進めましょう。なお、後述するRFIを活用すれば、非公開実績の確認が可能となります。
業績を参考にする理由は、経営の安定性を確かめるためです。開発会社が事業を継続できなくなった場合、システムの運用や保守を依頼できなくなるため、新たな外注先を探さなくてはいけません。そうしたリスクを抑えるためにも、候補となる開発会社の設立年数、社員数などを目安に安定性を確かめることが重要なのです。
開発後のサポート体制を確認する
システム導入後、トラブルが起きないようにシステムを監視することを「運用」と呼びます。もしもトラブルが発生した際に適切に対処することを「保守」と呼び、どちらもシステムのスムーズな活用には欠かせない作業です。開発後の運用や保守管理まで依頼したい場合は、候補となる開発会社にサポート体制があるかどうかを必ず確認しましょう。サポート費用も把握しておくと今後の検討に役立ちます。
相見積もりを依頼する
システム開発会社を選定する際は、相見積もりを行いましょう。相見積もりによって各社の単価、工数、開発期間などを比較できるようになるため、開発費用の妥当性を評価するのに役立ちます。相見積もりの際は、少なくとも3社以上の見積書を集めてください。2社以下の場合、十分な検討ができないおそれがあるからです。届いた見積書に疑問点があれば、開発会社に問い合わせましょう。疑問点を解消することで、納得して依頼できるようになるのはもちろんのこと「自社の知見がどのくらいあるのか」を開発会社の担当者に知ってもらえます。結果的に、相性のよい開発会社に出会える可能性が高まるのです。
担当者との相性を確かめる
開発会社の担当者との相性も確かめておきましょう。自社の希望を汲み取ってくれるか、問い合わせに対するレスポンスが遅すぎないか、といった点をチェックするのがおすすめです。担当者との相性が好ましくない場合、システムの機能や品質に関する認識に齟齬が生じる可能性があります。思うようなシステムが納品されないかもしれません。そのため、候補先の担当者とコミュニケーションをとって相性を確認して、成果を期待できる開発会社を選定しましょう。
RFIとRFPを活用して開発会社を絞り込む
RFIとRFPを活用することで、自社にあった開発会社を見つけやすくなります。具体例を確認しましょう。
- 開発会社をリサーチして絞り込む
- 開発会社へRFIを実施して幅広く情報を収集する
- さらに候補を絞り込む
- 収集した情報をもとにRFPを作成する
- 絞り込んだ開発会社にRFPを実施する
- これまでの情報をもとに最終候補先を決定する
開発会社に外注してプロジェクトを成功させるポイント
プロジェクトを成功させるポイントの1つに「要件定義」があります。要件定義とは「自社のシステムに必要な機能や要件を明確にすること」です。システムに求める機能、品質、操作性といった項目を具体的に決定すると、依頼内容が明確になります。自社の求めるシステムを開発会社に伝えてシステムの完成イメージを共有することで、期待通りのシステム開発につなげるのです。また、人員や予算に余裕がある場合は自社にシステム開発に精通したスタッフを配置する方法もおすすめです。開発会社の担当者とのコミュニケーションがスムーズになるため、開発会社の選定や外注後の進捗管理などに役立ちます。
プロジェクト計画の進め方と必要性
プロジェクト計画を立てることで、システム導入の成功確率が高まります。一般的なプロジェクト計画の進め方を参考に準備を進めていきましょう。
<プロジェクト計画の進め方>
- プロジェクトの目標設定
- プロジェクトチームの構成
- プロジェクトの実行、進捗管理
- 成果物の納品、評価
プロジェクト計画を立てる目的は、予算やスケジュールを管理してシステムを予定通りに導入することです。外注先と連携をとる際も、あらかじめスケジュールを立てることで、スケジュールの遅れ、余計な出費といったトラブルを防止できるでしょう。
なお、プロジェクト計画の立案や進捗管理も外注することが可能です。プロジェクトマネジメントに関する専門知識やスキルを持つコンサルタント会社に依頼すれば、自社のリソースを確保しながら業務効率化を進められるため、自社の利益率向上を期待できます。
外注には委託料が必須となりますが、最終的な成功のためにプロジェクト計画の外注も検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
プロジェクトマネージャーが意識したい開発会社の選び方を4つ解説してきました。自社にあった開発会社を選定するためには、開発実績を参考に、製品開発における対応可能な範囲や得意分野を確かめることをおすすめします。業績を参考に会社の経営安定性を確認して、安心して依頼できるようにしましょう。非公開の情報の確認にはRFIが効果的ですし、候補先の絞り込みにはRFPが役に立ちます。自社にあった方法を取り入れてみてください。
複数の候補先から選定する際は、相見積もりを実施しましょう。各社の比較検討が容易になるため、依頼先の絞り込みに役立ちます。また、サポート体制の有無を確認することで、導入後の運用や保守を安心して任せられるようになります。もしもプロジェクトの立案や進行が負担になる場合は、プロジェクト計画の外注も可能です。ぜひ今回の内容を参考に、システム導入というプロジェクトを成功に導いてください。